LEOの授業から「死刑制度」について

LEOの授業から「死刑制度」について

これも、10年以上使用している、「死刑制度」の是非についての英文のテキストです。作者は、アメリカで20年以上「本当に死刑に値する」と思う死刑囚を含めて、死刑囚を見てきたプロです。その彼が、死刑制度には反対しています。理由は簡単に言うと2つ。1つは、死刑制度が次なる殺人の抑止力とはなっていないこと。2つ目は、どうしても「冤罪」がなくならないことです。(さらに、彼は、死刑を課している私たち自身が、死刑制度によって「獣的な」人間になってしまう恐れがあることも指摘しています)。

読後に書かせるエッセイでは、死刑制度に対して「賛成」、「反対」の両方の意見が出てきます。世界的にみるとこの制度を廃止している国が多いようですが、どちらが良いとは簡単に言える問題ではないように思えます。私だって、肉親や親友が殺されたらどうなるか。強い恨みを持つことは間違いありません。ましてや、最近、いやな、惨たらしい事件が起きていますよね。その加害者は生きている価値があるのかと思ってしまうのは事実です。

この問題を考える時、重要なことは、制度を廃止するか否かよりも、なぜこうした事件が起こってしまうのか、なくならないのかを考えることだと思います。

最近の幼児虐待事件での痛ましい死は、今の日本社会にとって重要な問題だと考えます。今、日本の家族で起こる問題というのは、日本の現代社会の縮図と言えるのではないでしょうか。つまり、社会自体が相当病んでいるということです。この状態が続く限り、死刑制度があろうがなかろうが、また、むごい事件は起きてしまうということ。この病根は何かを徹底的に考え、そこを治癒する方策を探り、消すべき対処をしなければ解決することはないでしょう。

今の日本は、多くの病気を抱えているように思います。現場で働いている人は思いつくことが多々あるのではないでしょうか。それにもかかわらず、その部分を見ようとしないか、見えないのか分かりませんが、その場その場の対処法しか考えようとしていない感が強くあります(正直、モグラたたきをしているようにしか見えない)。こうした的外れなこと、責任を取らないような対応しかしないことが、積もり積もってたいへんな事態を引き起こしているのです。日本社会は安全であるというのは単なる「神話」だということに早く気付くべきです。今、真剣に向き合わないとこれからもっとひどいことになると真摯に考えてほしい。

死刑制度を続けるべきか、廃止すべきか、というのは難しい問題です。答えはすぐに出ないでしょう。でも、これをきっかけに、日本の社会はこれでいいのか。むごい事件はどうして起こるのか、どう立ち向かえばいいのかを考えてたらいいなと思います。高校生対象の授業ですが、彼らも18歳から投票権があるわけで、誰かが何らかのきっかけを与えてあげなければ、さあ、だれに投票したらいいものか、どこをポイントに候補者を見るべきかがまったく分からないでしょうから