「帰国後の英語」の逆説

 帰国後の英語保持や、英語力についてよく相談を受けます。滞在年数や、年齢にもよりますので、こうすればいいですよ、と一言では答えられません。

 ただ、一つ言える事があります。それは、滞在中にどれだけ英語を使っていたかということです。換言すると、滞在中にどれだけ向こうの学校に溶けこみ、生きた英語を身につけてきたかによるということです。

 現地校やインターで、友達をたくさん作り、楽しい学校生活を過ごして帰国した人は、小学生で帰国した場合でも、かなりいい英語を身に付けています。特に、小学校5,6年生での帰国の場合、努力次第ではキープするのも可能です。というより、その年齢でしたら、さらに英語力を上げることも可能です(オーラル以外)。

 英語をうまく保持でき、さらに向上させている人に共通して言えることは、本をよく読んでいることです。今までに出会った生徒の中で、小6の秋に素晴らしい英語を身に付けて帰国し、帰国後もさらに英語を伸ばした人がいます。その子は常にペーパーバックを持ち歩いていました。そして、英語の本で面白いものがあったら教えてくださいと尋ねてきました。英検やトーフルといった試験にも積極的にチャレンジしました。

 この子の場合は、将来、アメリカに帰りたいという強い思いがそうさせたのだと思います。つまり、アメリカ滞在を存分に楽しめたので、英語力も現地の子同様、あるいはそれ以上に付いたのです。また、帰国後も、自分を育ててくれたアメリカにまた戻りたいという強い思いが、英語力向上の努力に向かわせたのでしょう。

 いろいろな事情があるでしょうが、現地で友人を作ることができなかったり、付き合いが日本人グループのみだった場合は、本当の英語力が付いていませんので、英語を保持することは難しくなります。特に、日本人が多い地域に滞在した人、高学年になってから初めて海外に出た人などが苦労していると思います。また、当然、滞在期間が短かった場合は、英語が分かりかけたら帰国というケースもあるでしょう。

 そういう人でも、耳では英語が残っていますから、英語にできる限り接することを心がけるといいでしょう。もちろん、海外と同じ環境を期待することはできませんので、学習言語としての英語と割りきって勉強するのがいいと思います。一般の人でも避けて通れないところですし、将来のためでもありますから、文法などをきちんと学び、受験でいい点を取る、英検を準2級くらいからチャレンジするなど、何か目標を持って、徐々に英語力を上げていく努力をしてほしいと思います。もしかしたら英語が嫌いになってしまった人も、焦らずに一つずつ目標をクリアーしていくと、自信が持てるかもしれませんよ。

 英語を身に付けたり、英語力を保持・向上するという問題は、滞在国、海外に行った年齢等々により、理想通りにはいかないかもしれません。また、ネイティヴと同様の英語を身につけた人は、今度は、日本語で非常に苦労する事も多々あります(実際、帰国後、どうしても日本語を避けがちな人も多く見られます)。

 いずれにしても、語学に関しては、本を読む習慣が付いた人は強いということです。残念ながら、そういう人は少数派です。では、どうするかですが、一つは上手な動機付けが大切だと思います。大きな目標よりも、小さな目標を設定して、それがどうして大切なのかを理解して(理解させて)、その目標に向かって努力することです。子供が目標を達成できたら、大袈裟に褒めましょう。良い気分にさせて、次の、あとちょっと努力すれば達成できそうな目標を作ると良いでしょう。口で言うほど簡単ではありませんが、実践できている人もいますので、がんばってください。

 しかしながら、最大のポイントは、海外滞在中の過ごし方にあります。つまり、帰国後の英語力の問題は、帰国前にあったということです。それ抜きにこの問題を考えると、とても難しい、解決できない問題になってしまうのです。