「先生、学校の英語テストや模擬テストで、自分ではもっといい点が取れてると思うのですが、
いつも思った点に届かないんです」
これは、よく聞く質問です。英語で教育を受けてきた帰国生は、英文を読むと、「大体こういう
ことだな」というところまでは読めてしまう人がほとんどでしょう。しかし、この「大体」は、
人によって大きな幅があります。実際は50%程度の理解で、「大体わかった」と言う人もいれば、
60~70%くらいの理解でそういう人もいます。前者は明らかにまだまだ英語力が足りないのですが、後者はかなりたくさんいるというのが私の経験から言えることです。この部分の人が、結構危ない
ケースが多いのです。自分では理解しているつもりなので、問題が悪いのではないか、採点がおか
しいのではないかと自己解釈して、本番では何とかなるはずさ、という気持ちがどこかにあるの
です。この状態が受験学年まで続いてしまうとまずい結果になってしまいます。
「分かった」とはどういうことでしょうか。LEOの生徒が受験する私立トップ校の英語問題には、
ネイティヴの学者の本や論文、英文雑誌などからの文章が使われます。例えば、このレベルの
日本語の文章を考えてみましょう。そうした文章の内容をしっかり理解するためには、そのための
語彙、その文章のトピックやその背景に関する知識が必要となります。それを持ち合わせても、
作者の言おうとしていることを完全に理解することは難しいかもしれません。さらには、作者と
ともにそのトピックについて考えてみるという姿勢が必要となります。
LEOではこのことを生徒に分かってもらい、では、そうした文章をより深く読むにはどうしたら
いいか、文章の読解とはどういうことかを理解したもらえる授業を行っています。具体的には、
そのレベルの文章に数多く接することと、そこに使われている語彙をしっかりマスターすることが
必要です。LEOで使用する文章は、例えば、「死刑制度」「グローバリゼーションの功罪」「地球
温暖化対策」「AIと近未来社会」等々がトピックのもので、その文章を読みながら、ヒントを
与えたり、具体例を紹介したりして知識を増やしてもらいながら、それに対する自分の意見を英文で
表現する練習を行います。語彙力を上げるために、ある授業で読んだ文章中にある単語のテストを
次の授業で必ず行います。これは、かなり力のある人でもしっかり準備してこないと高得点は取れ
ません。これを1年、2年と続けた人は、海外の大学で授業を受けても支障がないレベルまでの
語彙力をつけることができます。これを繰り返し行うことで、生徒は文章をより深く読めるように
なっていきます。そして、生徒自身が文章を解釈する(読解する)とはどういうことかを段々と
理解するようになるのです。そして、そこまでの深度で文章を読めるようになると、いろいろな
トピックに興味が持てるようになり、どんどん伸びて行けるのです。
言うは易しですが、それを実際に実践するのには根気も必要です。ですが、興味を持ち、自分の
英語力が上がっていると実感できると、そこからはそれほどの苦労はいりません。そこまで、少し
努力してほしいのです。
このことを伝える良い例がありますので紹介します。かなり長くなってしまいますが(以前の
ブログから)、昔の生徒で、上述した私の授業で生徒に伝えたいことを見事に実践してくれた
例です。
私が出会った生徒で、非常に印象に残っている生徒が何人かいます。今日はその中の一人に
ついて紹介しましょう。
その子は、高3女子で、英語がとても良くできる人でした。それにもかかわらず私の英語の授業を
受けに来てくれました(プラス日本語小論文のクラスも受講)。英語には相当な自信があったと
思います。各種試験における英語スコアは立派なものでした。授業をしていても、しっかりした
英語力の持ち主だと感じていました。
私が使用する教材は、高校生対象とすればなかなか難しく、帰国生だからこそ使用できるもの
です。つまり、ネイティヴの学者が書いた論文や一流の雑誌の記事や新聞記事を使用しています。
帰国生で、ある程度の英語力のある人ですと、ざっと一読すると、凡そはどんなことが書いてあるか
分かります。ただ、それでその文章を理解したかというと、決してそんなわけでなく、事実、その
内容について質問してみると、曖昧に解していたり、語彙の足りなさが露呈されたりすることが
しばしばです。
私の授業では、前の授業で使用した文章中に使われていた単語について、次回の授業の最初に
テストを行います。それは、このレベルの文章を理解できるだけの語彙力を付けてもらうためです。
このテストは、力がある人でも、きちんと準備してきませんと良い点は取れません。意外な点に
なってしまい、勉強してこなかったからだ、と言い訳する人が多いテストです。
しかし、この生徒は、私がこの単語テストをする趣旨を理解してくれたのだと思います。また、
英語はほとんど問題ないと思っていたけれど、実際は、あるレベルの文章を本当に理解するため
には、まだまだ自分の英語を鍛える必要があると分かってくれたのです。 彼女は、私の課す単語
テストで、毎回満点を取るつもりで臨んでいましたし、実際、何回も満点を取ってきました。
さらに、文章理解を高めようという姿勢で授業に臨んでくれたと思います。
単語が増えただけでは、文章を深く、正しく読むことはできません。授業では、いろいろな
分野の文章を教材にして、そこで扱うトピックについて生徒自身に考えてもらうようにしています。
トピックが難しいときは、ヒントを与えてヘルプします。エッセイの授業では、自分の意見を
英語で書いてもらいます。
もちろん、生徒の中には問題に答えさえすればいいと考えて受講している者もいます。彼女の
場合は、その一つ上のレベルで授業を受けていたと思います。ただし、自分の英語力をひけらかす
こともなく、どちらかと言えば地味に受講していましたが、私が、授業中に話すヒントなども聞き
漏らすことはなかったように思います。そして、物事を理解するということがどういうことなのかを
学んでくれたようです。
彼女も最初からそういう態度で来ていたわけではありません。ただ、自分の力に奢らず、さらに
学べることがあるのだと分かったときに、そういう姿勢で対してくれたのです。これはたいへん
ポジティヴな姿勢だと言えるでしょう。その姿勢で最後まで勉強してくれました。日本語の方は、
彼女にとって容易ではなかったと思いますが、受験が近づくと、小論文の先生から、彼女の書く
ものが大分良くなって来たという報告を受けました。日本語もポジティヴに受講していたので
しょう。
彼女の大学受験は、見事な成功で、第一志望の大学に進学しました。受験終了後、お母さんと
一緒に挨拶に来てくれたとき、彼女の口から印象的な言葉を聞いたのでした。彼女曰く、「私は
ここで学んだことがあります。それは、謙虚さということです。どうもありがとうございました。」
私はこの言葉を聞いたとき、はっとしました。私にとって意外な言葉だったからです。が、
その瞬間、彼女の偉さを感じましたし、教師としてたいへんうれしく思いました。彼女は大学に
進学しても、また、その後も謙虚な姿勢で多くのことを学び、身に付けていくことでしょう。
私も改めて「謙虚さ」という言葉が持つ本当の意味を教わった気がしました。謙虚さという姿勢は
決してネガティヴなのではなく、絶対的にポジティヴなのだということを。彼女に感謝しなくては
なりません。「謙虚さ」という言葉が持つ美しさを教えてもらったのですから。教師をしていて
本当に良かったと思えるときでした。
以上です。その後、彼女のように英語に自信があっても、英文を十分に解釈するとはどういう
ことか、そうするためにはどうすればよいかを学んでくれた人はたくさんいます。それは、英語に
かかわらず、何語で書かれたものでも同じです。また、これから大学を卒業して社会に出た時にも、
本を読むことだけでなくいろいろなものを吸収し、理解するうえで重要なことになるでしょう。
まずは、英語テストで自分が納得できる点を取るためにLEOで学んでみてください。半年以上
続ければ、点は上がるでしょうし、それ以上の楽しさを見つけられると思いますよ。そうすれば、
良いことが待っていてくれるはずです。